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どっかの馬鹿の妄想と生活と創作についての雑記。
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カラスと私。

「もう……もう、行っちゃうの?」
キヨは唇を尖らせて、上目遣いにカラスを見た。短い髪を片方の手で撫でるのはキヨが辛い時に見せる癖だった。カラスはそれをどうにかしたいと思ったが、どうにもならないことに酷く憤りを感じた。
カラスは文字通り、カラスのような黒い外套(がいとう)の中から小さなランプを取り出し、火をつけた。ガラスから琥珀色の明かりが漏れ、ふわりとカラスの長身の体を持ち上げる。
「キヨ、僕はいかなくちゃいけない。君との旅は面白かったけれど、もう僕は君と一緒にはいられない。これ以上はいられないんだ」
「でも……」
「君を傷つけることはもう、僕にはできない。見ていられないんだ。これが一番いいんだよ」
そういってカラスはカラスのような白いお面の向こう(カラスがいうには病気から身を守るためのお面)の小さなガラスのを隔てた二つの穴から、笑った。
自分の外套を掴んで離さないキヨの小さな手を撫でる。
思えば、たくさんのことがあった。
黒帽子の悪魔との押し問頭、土の赤い魔女、森の小さくて大きな巨人達。
キヨに助けられて、キヨを助け、キヨと切り抜けたこの旅。
「さあ、夕日が沈む前に……」
「……さようなら、カラス」
「違うよ、キヨ。またね、だろう?」
「そう、ね。そうよね、またね。カラス」
キヨは震える喉をぐっと抑えて、硬い指をほどく。カラスの体は風に靡かれるようにふわりと持ち上がり、距離を伸ばし続けていく。キヨは溢れそうな涙をこぼさない様に、その姿を目に焼き付けるようにカラスの黒い外套を見つめ続けた。 
長くて短い旅は終わりを告げた。


何かファンタジーっぽいのが浮かんだから最後だけちょっと書いた。頭の中に世界を作るのって人間の特権で、もっとも私が好きなこと何ですが、やっぱりいいですね。文字にするとチープかもですけど。

ちなみにカラスの外見はこんな感じ。
Medico_peste.jpg










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幸せになりたいと思うけど、幸せを手に入れた瞬間、幸せを失うことを意識しなければならない。いつか消えてしまうことに怯えなければならない。だったらずっと不幸のままでいい。
あとネットで小説とか書いてます。ヤンデレとか好きです。
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1900/06/07
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