どっかの馬鹿の妄想と生活と創作についての雑記。
「話しって?」
私がそう聞くと、彼女は「いつも暇でしょ」と笑って当たり障りのない話しをした。 私はそこで何となく違和感のようなものを覚えたが、あえては聞かなかった。ただ、いつも連れているはずの子供が車に乗っていないことによくないものを感じた。 「……そういえばさ。○○って怖い話しとか好きだったよね」 「昔はね」 下り坂前の赤信号にさしかかった。隣は自転車屋だが、店主の姿は見えない。 「何で? 今は好きじゃないの? □□とかと仲良かったよね」 彼女は残念そうな顔で私を見てそういった。手に入るはずのものが手に入らなかったかのような、そういう失望の色だ。 「何かにハマる時期ってあるじゃん。アイドルとか歌手とか、そういうのと同じ。私はたまたま、それが」 オカルトという言い方は格好をつけているようで、少し恥ずかしかった。 「それが、ホラー的なものだったってだけ」 「あ、そう」 彼女はだまり、スピッツの空も飛べるはずという曲を選曲し、アクセルを踏んだ。 その後、タバコを吸うかと聞かれ、私は吸わないと答えた。 「霊っていると思う?」 「さあ、いるかもしれないし、いないかもしれない。何で?」 唐突に始まったその一言に私の中の違和感が氷解(ひょうかい)し始めた。 そもそも彼女はそういうものを面白がりはするが、信じたりはしないタチなのだ。 「何となく」 長い沈黙があった。 「どうしたの? 何かあった?」 「あったらどうする?」 「帰る」 「何で?」 「巻き込まれたくないから」 私がそういうと彼女はアクセルを踏みながら、こちらを見て睨んだ。 「ムキになってる! やっぱり気のせいじゃないんだ!」 「前見て、危ない」 「助けてよ、あたし、そんなつもりじゃなかった。本当にいるなんて思わなかった!」 私と道路を交互に見ながら彼女は激高した。 そこで何を指しているのか分かったが、私は意地悪く笑った。認めると、やっかいなのは、経験上分かっている。 「何の話? どうしたの、おかしいよ」 「後ろの席見てよ」 私は見た。 「……それが?」 「見えないの? だってよく“そういう”話ししてたじゃん」 「何が?」 私は手探りで、車の解錠を確かめて、彼女に首をかしげた。 「だから、ずっとついて来てるの! それが、ずっとずっと! 夜もずっと」 「取り憑かれたって言いたいの? あのね、幽霊なんていないよ。全部、幻。自分の頭の中で創りだした幻覚なんだって」 「やっぱりムキになってる! やっぱりいるんだ! あたし、幽霊だなんて一言もいってないし」 それみたことか、と彼女は興奮気味に息巻く。私は深呼吸を繰り返して、言葉を尖らした。 「私には分からないけど、本当ならお寺とか行ったほうがいいんじゃない?」 「もう行った」 「それでどうだったの?」 「それぐらい分かるでしょ? 今、こうなんだから!」 「とりあえず、帰らせてよ。帰らせてくれないなら、自分で歩いて帰るけど」 「あははは、そうなると、“それ”が○○についていくかもよ? 私と一緒にいた方がいいんじゃないの?」 それが本当ならば、とっくに別の人間に移っているだろうと私は思った。即ち、私に移動するようなものではない。 「帰る」 「……」 私が扉に手を掛けると彼女は無言でアクセルを強めた。 「どうすればいいの?」 「紹介してよ」 「誰を?」 「□□」 “詳しい”友人の名前だった。 「いいよ」 私は笑った。 「もう死んでるけど、それでいいなら」 PR ∴ この記事にコメントする
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幸せになりたいと思うけど、幸せを手に入れた瞬間、幸せを失うことを意識しなければならない。いつか消えてしまうことに怯えなければならない。だったらずっと不幸のままでいい。
あとネットで小説とか書いてます。ヤンデレとか好きです。
∴ プロフィール
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鬱
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125
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非公開
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1900/06/07
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ニート→ライター(笑)→ニート
趣味:
読書、アニメ、映画鑑賞、引きこもること
自己紹介:
幸福論でいけば確実に不幸な人間です。それに加えて変人です。自分ではそうは思わないのですが、みんなが口を揃えて変人というので多分そうです。人間関係苦手です。そんな名古屋人。
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